第2回

Special Interview  | 三村 真宗 

ジョイント・ベンチャーで成功するための3つの軸と魅力とは

三村 真宗

MASAMUNE MIMURA

株式会社コンカー 代表取締役社長

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ジョイント・ベンチャー(以下、JV)を活用し、コンカーの日本法人社長として見事に成功を収めた三村氏。その秘訣は「シンプルな成功の法則だ」という。


「JAPAN CLOUDで社長業にチャレンジしよう思われる方に共通していえることですが、アメリカで成功しているソリューションは、日本でほぼ成功しています。安直ともいえる発想ですが、アメリカで成功しているかどうかを見れば、リスクはある程度回避できます」


 三村氏が入社した2011年の時点で、コンカーはアメリカでもかなり大手企業に入っていた。“これは間違いなく日本でも広がる”という感覚があったと話す。


「こういった新規事業の成功には、三つの軸が必要です。一つ目は、マーケットが大きいかどうか。二つ目は、そこに問題があるかどうか。みんなが困って課題が存在するかどうか。三つ目は、技術的革新が起こっているかどうか。この三つがそろっていれば、ほぼ間違いなく上手くいくんですよ」

<新規事業が上手くいく3つの軸>

  1. マーケットの規模の大きさ

  2. そこに共通の課題・問題があるか

  3. 技術的革新が起こっている分野であるか

「コンカーについて、この三つの軸でお話すると、まず一つ目の規模については、コンカーが扱う領域である経費精算自体は会社の中ではマイナーな業務ですが、どの業界、どの規模の企業にも経費精算があります。だから、経費精算だけをかき集めたら、かなりの事業規模になり得えるんです。二つ目の課題・問題については、経費精算はアナログで多くの人が困っていますよね。そして、その課題は三つ目の技術的革新につながります。クラウドという考え方やスマートフォン、電子マネーが活用できる。今までの経費精算で行われていた、紙の領収書をもらって貼り付けて、エクセルに手で打ち込むという世界から、デジタル化できる技術の波は来ていたんです。これらを踏まえて『これはもう勝てる賭けだな』と思いました」


 そうして外資系スタートアップ企業の社長に就任した三村氏。コンカーでの仕事は、自分のキャリアの集大成になっているという。
「マッキンゼー時代に培った問題解決力やSAP時代に技術職をやっていた頃の土地勘、組織論、それから英語力、そういうあらゆる経験が集大成として今に活きていると感じています。


 たとえば、本社とのコミュニケーション一つ取ってもそうです。外資系の社長の多くが、本社とのコミュニケーションで苦労しています。その点でいうと、大きく役立ったのはマッキンゼーの問題解決力ですね。マッキンゼー時代は、クライアントに対してかなり緻密な資料を作っていました。その経験を活かして、コンカーがどういう戦略で、どういう経営資源をどういう風に割り振って、どういう課題があるのかなどの全てを緻密な資料に落とし込んで、本社にぶつけます。


 本社には2、3,000人程度の人がいますが、マッキンゼー的なコミュニケーションを受けた経験が少ない人たちがほとんどだったので「こんなに緻密なコミュニケーションがあるのか」とビックリされることがよくありました。そうしたコミュニケーションを通じて、私がやろうとしている戦略も課題も全てをつまびらかにしていったんです。僕としては『これだけつまびらかにしているのだから、問題があったら何でもいってくれ』という感じです。このような相互理解をベースにして、色々なインプットも受けましたし、『これでいいよ』と合意ももらえました。
本社からすると、とても透明性が高いので、上手くいっても上手くいかなくてもその理由が分かるんです。多くの外資系日本法人が失敗するのは、本社とのコミュニケーションが上手く行えず、何をやっているのかが不透明だからなんです。業績がいいときは褒められますが、業績が悪くなると何が上手くいっていないのか、その原因がよく分からないので『社長を後退させよう』という議論になってしまうんです。


 それからもう一つ、よくある悪いケースですが、本社からテンプレートが落ちてきて、それをそのまま使ってコミュニケーションすることです。それで『分かってもらえたと油断をするんですよ」


 本社のテンプレート通りにやっても透明性は図れないという三村氏は、本社のテンプレートを一度も使っていない。むしろ三村氏がやっている報告のスタイルが本社でテンプレート化され、他の国に横展開されていた。


 さらに社会的、文化的な情報を前提としたコミュニケーションも、本社とのコミュニケーションの課題だと話す。
「たとえば、コンカーがある日本の大手企業と提携したことがあったんです。それで、その大手企業の社長のところへ、コンカー本社の創業者を連れていくというアポを取りました。この大手企業の社長の名前は、みなさんがご存じだと思います。しかし、国が違えば、そもそも社会的な情報も違います。その社長にアポを取る大変さを、僕は十分に伝えられていませんでした。すると、アレン・マイナーさんが『その方はアメリカのジェフ・ベゾスだから、とてつもないアポなんだぞ』と補足してくれたんですよ」


 そのことで『それはすごいじゃないか』と本社に理解してもらえたと話す三村氏。社会的な情報を前提としたコミュニケーションやメンタルの部分では、JVが相談相手になってくれたという。


 「JVは僕の相談相手です。社長は孤独なんですよね。社員に弱みは見せられないし、本社が日本で成功する道へと導いてくれるわけではない。むしろ本社からの要望で上手くいかない可能性もあるし、やりたいことが本社の意向に沿わないこともある。また、常に評価される立場だ。だから社長にとってメンターが必要なんですよ。そういう意味で、僕はJVがメンターとなってくれたおかげで失敗せずに済みましたし、心の支えになりましたね。


 また給与条件の面でも、JVが代理人のように守ってくれた側面があります。僕と本社だと、僕の立場は圧倒的に弱くなります。外資系の日本の社長は立場が弱いんですよ。特に初期の頃は結果がなかなか出ていないので、処遇の交渉がしづらいんです。そこもサンブリッジがフォローしてくれた。世の中の外資系社長のサラリーのマーケット情報を集めて、それをベースに私の処遇が妥当なものになるよう本社にコミュニケーションしてくれたんです。JV式だったからこそ、そういう安心感はありましたね」

JV式で外資系スタートアップの初期メンバーにジョインする二つの魅力

 三村氏は、JV式外資系スタートアップの初期メンバーにジョインする魅力が二つあるという。これは100%外資の子会社と大きく違うと話す。
「100%子会社の外資系日本法人とJV式の外資系日本法人を比較すると、100%式の外資系では、ほとんどの場合、日本法人の社長といっても営業マネージャーになります。営業職以外の役職・職種は本社がレポートラインで、日本法人の社長にはドッテッドラインなんですよ。だから、ダイナミックな意思決定ができない。導入コンサルタントは本社の誰かに報告しているから、大きな舵取りをしようとしても全員がすんなり従うことが難しいんです。


 たとえば、導入リソースが足りないときに営業のリソースをダウンして導入に回す決定もできません。大きな方向性を出していくときに、営業以外の他部門は本社の下にあるので、『方法を考えたからやろう』ではなく『協力してくれませんか?』というお願いベースになってしまうでしょう。


 JV式の場合はその逆で、多くの場合、全ラインが日本法人の社長にレポートする。営業、サポートなど全てが自分の配下になる。自分で意思決定して、動かせる。これは大きな差ですね。


 もう一つ、100%子会社の場合は、できあがった会社にパラシュート的に就任するわけですから、文化がすでにできあがっていて、自分の色が出せません。また、人材も自分が採用した人ではないので、いろいろな難しさが出てくることが予測できます。


 JV式の場合は、ゼロからやっていくので、自分が正しいと思う企業文化をデザインしていけます。僕は自分で採用していますし、自分がデザインした文化を作っているので、あたかも創業社長のような気分なんです。


 コンカーでは“高め合う文化”というキーワードを掲げ、会社として取り組んでいます。自分が企業文化をデザインできるかどうかは、本当に大きな違いだなと感じていますし、JV式の魅力だと思います。


 外資系の日本法人の社長は多くの場合、手足を縛られている感じがありますが、僕はかなり好きにやらせてもらっている感じなんですよ」


 JV式の日本法人の中でも、特に三村氏は自由度が高い社長といえるだろう。それは本社からの信頼を、三村氏自らが勝ち得てきたからでもある。
「コンカーのMVV(ミッション・ビジョン・コアバリュー)はオリジナルです。本国の意向は一切入っていないですね。あるとしたら、本社の思想である『人を大切にする』ことでしょうか。それは僕自身の思想でもありますね。


 僕がここまで自由にやらせてもらえるようになった背景には、先ほどお話した緻密な報告と、毎年成長し続けていることがあると思います。『任せて大丈夫だ』という信用を作っていけたことが大きいでしょうね。また、コンカーの中では多くの社員が様々な部門を動き回っていますが、私は9年間、社長という一つの役割をやり続けてきました。そういった意味でも、社内的に敬意を払ってもらっていると感じています。
やりたいことを自由にやらせてもらえますし、むしろ『日本のやり方を習え』といわれることもあるんです。この前は、グローバル企業のマネジメントが日本に来て、日本式のやり方を学ぶセッションを行いました。こうしたことは、他の外資ではなかなかないと思うんですよね。


 今、コンカーとして、グローバルでもトライしたことのない前代未聞のあるプログラムの準備をしています。これはコンカー発信なんですよ。しかし、CFOはそれに難色を示しました。そんな中で、本社のCRO(Chief Revenue Officer)がいったんです。『日本のオペレーションは世界最高水準だから、日本でできなければもうコンカーでは世界中どこでもできないだろう。だからこれを今、日本で認めなければ、一生できない。だから日本でやらせたい』と」


 三村氏は、毎年オーバーアチーブを重ねている。そして、4年前から創設された「マーケット・オブ・ザ・イヤー」を4回連続でもらっている。これは今のところ日本のみが得ている称号だ。


 さらに、三村氏が信頼を得てきたもう一つの理由は、アントレプレナーシップである。実はコンカーの支社の中でも日本以外の国では、他の外資系企業の支社と同じように社長には営業マネージャーとしての役割しか与えられていない。つまり、日本以外の支社長は、目先の営業目標を達成する視点が強く、そのリソースは限られているのだ。
「私の場合は、自分の手の内にある程度のリソースがあります。そのあらゆるリソースを使った経営の自由度があるんです。だからアントレプレナーシップ的に色々な仕掛けを行っています。


 コンカーは経費精算が祖業ですが、日本法人ではそれ以外にも、出張のクラウドや請求書のクラウド、アウトソーシング事業など製品ラインナップが1番多いんです。ほとんどの国では『そろそろ出張業務をやった方がいいのでやってください』という本社の指示が出てから従っています。だけど僕らは、いつも本社からいわれる前に『事業拡張したいので、この製品を早く出させて欲しい』と提案しているんです。


 またアメリカやカナダ、オーストラリアでは中堅・中小の割合が大きいのですが、その理由は、英語圏では既存の製品をそのまま使用できるため早々にエントリーできるからなんです。しかし、非英語圏では中堅・中小ビジネスをそこまで積極的にやってきていない。それも日本では、こちらから『大手向け事業の成長が鈍化する前にやりたいから、中堅・中小ビジネスをやらせてほしい』と提案しています」


 三村氏は他にも、日本独自で法律の規制緩和活動をしたり、電子決済や電子マネー連携を図ったりするなど、本社からいわれるより前から色々な仕掛けを提案し、実行しており、本社からすれば「異質な存在」であると同時に、そういったところに敬意を持たれているのである。
「組織のガバナンスモデルがドッテッドになるか、ダイレクトになるかは大きな要素です。宗教の差や資本主義か共産主義かというくらいの違いがありますね。JV式で社長になったことで、私の中で全てを完結できたことが最も良かったと感じていることです。


 ビジネスを0から立ち上げるわけですから、誰かがやってくれる感覚や何かが足りないときに誰かの責任にしたがる思考の持ち主は向かないと思います。0からやることにやりがいを感じられる人、何かなければ自分で立ち上げる人、そういう思考の持ち主でなければ難しいですね。だからJV式にも完全に頼るのではなく、自分が成し遂げたいもののために活用していくことが大事なんです」

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